第5章 アフターナイト
そうバーカウンターの中から
バーテンダーが朱莉に声を掛けて来て。
「いいえ…知りません…」
朱莉がそう首を小さく左右に振って
バーテンダーの言葉にそう答えると。
『貴女の飲まれている、
そのカクテルには
対照的な…、相反する言葉が…
込められているんですよ』
相反する…真逆の意味を持つ…。
そんなカクテル…なのだと。
ブルーム―ンの事を説明して来て。
『1つ目の意味は…、
そのパルフェタムールが持つ、
パルフェは「完全な」、
タムールは「愛」を繋げて、
完全な愛と言う意味と。
そのカクテルの名前のブルーム―ンが
珍しく、滅多に起こらない事から。
2つ目の意味は…
叶わぬ恋や…無理な相談とも
相反する意味を持つ、
1杯なのですよ…でも…』
そう言葉を一旦区切ると…。
『私は…奇跡の予感を信じたいですがね』
バーテンダーの言葉に…。
一気に酔いが回ってしまって。
あのマスカレイドナイトの夜を…、
思い出さずには居られない。
あの夜と…同じだ…。
そう…、委ねられているのだ
彼に…全てを…。
今夜の…この”再会”を、奇跡にするのも。
何も無かった事にするのも…全てを。
選んでも良いと…選択を委ねられる。
『須藤様…、お連れ様よりこれを』
そう言って、バーテンダーが
付箋に書かれたメモを手渡して来て。
その筆跡は編集長の物で。
そのメモを見て…、
このナオトさんとの
奇跡的にも思えた再会…は…。
マスカレイドナイトのオーナーと
うちの編集長とが結託して起こした物だと。
そのメモにネタバレされてしまったのだが。