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マスカレイドナイト

第5章 アフターナイト



『そちらの紫のチャイナドレスの、
お客様。もしよろしければ
一杯…如何ですか?お作りしますよ』

私が何も飲んで居なかったからなのか、
バーカウンターの中から
あの時も店に居たバーテンダーが
そう私に声を掛けて来て。

あの時は…
ブルーのチャイナドレスだったから、
チャイナブルーが出て来たけど…。

生憎…私は、そんなに…
カクテルに詳しい訳じゃないから。

「すいません。じゃあ…、
何かオススメの…
紫色をしたカクテルを…」

お願いしますと言おうとして、
すっと…バーカウンターの方から
こちらの言葉を遮る様に手が伸びて来て。

『でしたら、バーテンダー。
彼女に…ブルーム―ンを…』

その声に…聞き憶えがあって
朱莉はハッとした。

あの時とは…微妙に
髪の色合いが違うが。

その…爽やかなイケボなのに、
どこか溢れる色気を感じる声には
朱莉は聞き覚えがあった。

ナオトさん…だ…。

バーカウンターも混雑してたし、
ずっと編集長を探してたから…
全然…ナオトさんに気が付かなかった…。

「あッ…あの…ッ…」

しぃーとマスカレイドマスクをした
ナオトが何も言うなと指を口元に当てて
静かにする様にと、
合図をこちらにして来て。

『どうぞ、
こちら…ブルーム―ンになります』

そう言ってバーカウンターに置かれたのは、
美しい青みがかった紫色のカクテルで。

丁度…、今の私が着ている。
このチャイナドレスの
色合いにとても良く似ている。

「凄く、綺麗な色…」

その…見た目の美しさに…、
朱莉が漏らす様にして感想を述べると。

『ええ…、でも…
このカクテルの良い所は
この美しい見た目だけじゃありませんよ?』

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