第10章 【安室 透】聖夜の誓い
大好きな声がして振り向くと、黒い笑みを浮かべた安室さんが立っていた。
どうしてここに・・・。
彼の姿を目にしたら、涙が次から次へと溢れてきた。
「彼女に触れて良いのは僕だけですから。
汚い手は離してくださいね」
「はあ?おにーサン、綺麗な顔してるね〜。
その顔傷つけたくなかったら黙った方がいいよ?」
若者の1人が安室さんに近付き、同じく笑顔で攻めている。
なるべく大事にしたくはないのだが・・・
カップルたちの中で騒ぎ出したため、煌びやかな街の一角に野次馬が集まり始めてしまった。
「おねーサン、今のうちに逃げよっか!
あとはアイツに任せときゃ大丈夫だから」
「やっ・・・もう!離してください!!」
「あんまり暴れない方がいいよー?
俺たち怒らせたら・・・・・・ッ!!」
シュッ・・・と素早い音を立てて、男の顔スレスレに安室さんの拳が飛んできた。
これが当たっていたら顔が潰れていたのではないだろうか。
「彼女に触れて良いのは・・・僕だけですよ?
さっさと目の前から消えてください」
「おにーサン、そんなこと言ってると・・・」
「お、おい!行くぞ!!コイツやべーよ!!」
「は?何言って・・・おい!」
・・・風のように去って行った2人組。
殴られたわけではないが、安室さんの笑顔は凶器になる時があるから怖かったのかもしれない。
「さて。さんは何故1人でここに?」
「何故、って・・・。安室さんだって、仕事じゃないんですか?」
可愛くない。
会えて嬉しいって・・・可愛く言わないと、また同じようになってしまう。
クリスマスに喧嘩別れだなんて本当に嫌だ。
「・・・・・・」
「・・・何か、されませんでしたか?」
「え・・・?・・・はい、何も・・・」
「ちょっと来てください」
私の手を引いて歩いて行く安室さん。
お互い言葉を発さないまま。
どこへ連れて行かれるのかと思っていたら、駐車場に止めてある彼のRX-7を見つけた。