第9章 【降谷 零】私のヒーロー
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事情聴取を終え、夜遅いということで
警察官に学校まで送ったもらった。
寮は既に消灯時間を過ぎているので
物音もせず、暗くて静まっている。
異性の寮に入るのは禁止されているが
美波に私の部屋まで送るように念を押された
降谷くんは、本当に律儀に送り届けてくれた。
部屋に入ったら1人で寝るのか・・・。
当たり前だけど、さっきのことを思い出して
怖くなっちゃうな・・・。
「降谷くん、本当にありがとう。
おかげで無事に帰ってこれました」
「うん・・・。夜、1人で怖かったら
隣の部屋の人とかを頼った方がいいよ。
さすがに教官も理解してくれるだろうし」
「そうだね・・・そうするね」
優しい降谷くん。
最後まで私のことを考えてくれている。
離れたくない・・・けど
これ以上迷惑を掛けられない。
「じゃあ、おやすみ」
「うん・・・おやすみなさい」
布団に入って目を閉じれば
きっとすぐに朝が来るはず。
そして朝食の時にまた降谷くんに
お礼を言えば、少し話せるよね。
よし、すぐ寝よう。今すぐ寝よう。
「・・・さん?」
「はい!・・・え?降谷くん、どうしたの?
寮に戻らないと・・・」
「あー・・・あのさ・・・。服、掴んでる」
「・・・わぁっ!!あッ・・・ごめんなさい・・・」
おやすみと言ったのに、何で降谷くんは
まだここにいるんだろう・・・と思ったら
無意識に彼の服の裾を掴んでいた。
しかも大きい声を出す始末。
何やってるの本当・・・恥ずかしい。
でも・・・手が震えて離せない。
迷惑だとわかってるけど・・・・・・
一緒にいてほしい。
「・・・・・・部屋、入っていい?」
「えっ!?そんなことしたら怒られちゃうよ?」
「大丈夫。さんが落ち着くまで・・・な?」
「・・・・・・うん。ありがとう」
私だけに向けてくれる降谷くんの微笑みに
ドキドキして心臓が飛び跳ねる。
異性を部屋に入れるどころか
寮に入れるのも規律違反なのに・・・
降谷くんの一言でそんなこと
全く気にならなくなった。