第9章 【降谷 零】私のヒーロー
早起きをして掃除をする生活も、もう慣れた。
今日も学校周りの掃き掃除をしながら
松田とふざけ合う。
「すっかり仲良しになっちゃったな、あの2人」
「陣平ちゃんの親友の俺としては
ちとジェラっちまうねぇ。
諸伏ちゃんもだろ?」
「俺は別に・・・」
ヒロたちに言われるほど、松田とは本当に
仲が良くなったと思う。
喧嘩をして殴り合った日が既に懐かしい。
ふと校舎の方に視線を移すと、同じく掃き掃除を
しているさんを見つけた。
今日もダークブラウンの綺麗な髪が輝いている。
入学式の時、壇上から見て目を奪われてから
気になっているが、未だに話したことがない。
「萩原くーん!次の休みの合コン忘れないでね!
イケメンいっぱい揃えてよー!
そこの金髪の外人さんとか!」
さんの友達が萩原に話しかけている。
合コン?ていうか、金髪の外人って俺だよな。
班長が2人に圧力を掛けてくれていたが・・・
さん怖がってねぇかな。
それよりも合コンって・・・彼女も来るのか?
いや、恋人がいるかもしれないし。
・・・・・・どちらにしてもモヤモヤする。
考え事をしながら無意識にさんを
見ているとバチッと目が合った。
あ、後ろ向かれた。
え、拒否られた?
「・・・・・・」
「おーい、降谷!
早く片付けて朝飯行くぞー!」
「・・・おう」
目が合った瞬間に逸らされたことで
モヤモヤがまた1つ増えてしまった。
この調子ではこれからも話し掛けるのは
難しくないか?
とりあえず落ち着いて作戦を立てようと
掃除用具を片付けて食堂へ向かった。
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「腹減ったー!いっただっきまーす!」
「うん、んまっ!朝から最高だわ」
食堂ではさんたちが先に
朝食を食べていた。
いつもなら姿が見えるように座るが
何だか気まずくて背を向けるように座った。
周りの男が彼女をじろじろ見ている。
ただでさえ女性が少ないんだ。
あんなに綺麗な人がいたら見てしまう、けど。
見過ぎだろ。
いや、僕も見てるけどさ。