第6章 【安室 透】秘密の時間
「さん。
あとで研究室に来ていただけますか?
先日の提出物に少し不備がありまして」
「え・・・はい、わかりました・・・」
そろっと後ろを向いて安室先生と視線を合わせると、やはりキラキラと笑顔が輝いていた。
提出物に不備・・・。
ちゃんと確認したはずだが見落としている部分があったのか・・・。
それだけ言うと安室先生は笑顔を振り撒いて教室から出て行った。
クラスのほとんどの女子が先生を目で追っている。
女子校でもないのに、これ程までに教師がモテるとは。
言葉遣いが丁寧で生徒にも敬語を使い、女性全員に優しくお姫様のように扱ってくれる。
生徒だけでなく女性教師にも人気があるらしい。
「はあぁぁ・・・かっこいい・・・。
だけ呼ばれてずるいよー!!」
「いや、私は嫌だよ・・・呼び出しなんて・・・」
「に不備があるなんて珍しいわね。
園子と美波ならわかるけど」
「安室先生からも呼び出されるなんて、やっぱり美女は違うわね!!」
ことあるごとに私を"美女"と呼ぶのは、やめてほしい。
周りの目が痛いんだから。
「何?、安室先生から呼び出しくらったの?」
「いつも言い方悪いよ、水嶋くん。
提出物の直しで呼ばれただけだから!」
「ふーん?
美女と王子の密会じゃねーのか!」
この人達は本当に・・・私を弄って楽しいのか。
なるべく目立たず学校生活を送りたいのに。
そんな私の気持ちを知らない彼は、今日も勝手に人の玉子焼きを摘んで食べている。
それを冷めた目で見ながら残りのご飯を急いで食べた。
「ごちそうさま!じゃ、さっさと行ってくる」
「ちょっと!メイクと髪型チェックして!」
「そんな気合い入れてどうするのよ・・・」
まるでデートに行く前かのように、美波と園子に身だしなみを直された。