第6章 【安室 透】秘密の時間
「えっ?先輩の告白断ったの!?」
「うん。興味ないから」
「本気で言ってる!?
学校で1番イケメンの先輩だよ!?」
興奮気味に騒いでいる美波の話を他人事のように聞きながら、お弁当を食べ進める。
いつもそう。
告白されて断ったことを伝えると、
「イケメンなのに」「優しいのに」と責められる。
人気者だからと言って、私は好きでもない人と付き合いたくない。
自分が心から愛している人に、愛されたいんだ。
「も大変ねー、毎日のように呼び出されて・・・」
「でも全員イケメンなんでしょ!?
やっぱり美女の周りにはイイ男が集まるのねぇ。
試しに誰かと付き合ってみたら?」
「えー嫌だよ。好きじゃないんだってば」
向かい合って食べている蘭と園子にも、毎回同じようなことを言われている。
イケメンを断り続けている私がおかしいのだろうか。
私だって好きな人と付き合いたいという乙女心はあるのだが・・・。
「2人も工藤くんと京極くんのことが好きで付き合ってるんでしょ?」
「え?ま、まぁね・・・やだもう、ったら急に・・・」
「確かに私の中で1番イケメンなのは、真さんだけど・・・」
彼氏の話題を出すと顔を赤くして照れる2人が可愛い。
本当に大好きなんだろうな。
私もこんな風に・・・堂々と好きな人の話をしたい。
「あーあ、私も彼氏欲しーい!!
でも、やっぱり学校一のイケメンは安室先生だと思うのよね!!」
「んー・・・・・・」
「はぁ・・・次の授業、安室先生だ・・・幸せ」
「そう言ってもらえて僕も幸せですよ」
突然、真後ろから聞こえた声にビクッと肩が跳ねた。
隣にいる美波の目がハートになって頬が紅く染まっている。
わかりやすいんだから、本当に・・・。
「皆さんのお弁当、美味しそうですね。
色鮮やかで綺麗です」
「と蘭は自分で作ってるんですよ!
先生は買ってきてるんですか?」
「えぇ、朝は時間がなくて・・・。
あいにく作ってくれる人もいないもので」
おそらく、いつもの王子様スマイルでも見せているのだろう。
目の前の園子と蘭も頬を染めている。