第4章 【安室 透】看病
「もう、1人で抱え込まないで・・・僕に頼って、甘えてほしい・・・」
「透さん・・・ありがとう。いつも頼ってるし甘えさせてもらってますよ?」
忙しい中こまめに連絡をくれて会いに来てくれて、私が引越したら透さんも近くに引越してくれた。
今日もポアロの仕事中だったのに私を家まで送ってくれて・・・・・・梓さんごめんなさい。
透さんが傍にいてくれる安心感があるから、怖い思いが蘇っても前を向いて生きていられるのだと思う。
私の首筋に顔を埋めている透さんの吐息がくすぐったい。
こんな時なのに変な声が出そうになってしまって、何とかごまかすのに必死だ。
「心配なんだ。1人で我慢してないか・・・1人で泣いてないか・・・。もう、に傷付いてほしくないんだ」
「ん・・・大丈夫ですよ。私には、透さんがいてくれるから・・・何も怖くないです」
ゆっくりと顔を上げた透さんと視線が合う。
至近距離で見る綺麗な顔に、ドクンドクンと鼓動が速くなる。
これは・・・キスする流れだよね。
彼の手が私の頬に触れたのを合図に、目を閉じて唇を受け入れる準備をする。
早く来て・・・透さん・・・。
顔が近付く気配がして構えていたら、両頬をぎゅっと押されて唇が前に突き出た。
「・・・・・・とーるはん?」
「くくっ・・・とーるはんって!面白い顔してる」
「っ!!もー!何するんですか!」
せっかくのいい雰囲気が一瞬で壊されて、強張っていた身体から力が抜けた。
キスしたいと思ってたのは私だけか・・・。
悪戯をしてニヤニヤしている彼に腹が立ってプイッと顔を背けた。
「あ、怒った?」
「怒ってません」
「怒ってるだろ?悪かったって・・・キスしたいのは僕も同じだよ」
真剣な表情で覗き込まれるが、同じなら何故してくれないのだ。
こちらは目を閉じて待っていたのに楽しそうに揶揄って・・・。
納得できなくてジト目で彼を見ると困ったような顔を返された。
「熱があるんだから寝て治さないとダメだろ?治ったら・・・離してって言われても離さない」
「と・・・るさん・・・」
また顔が熱くなってきた。
熱を上げているのはこの人のせいなのではと思うほど。
お腹も心も満たされ、彼の暖かい手で頭を撫でられながら再び夢の中へ旅立った。