第3章 【降谷 零】上司からの愛
「ありがとうございました・・・」
洗面所から帰ってきた風見の様子が変だ。
突然、洗面所を貸してくれだなんて・・・何を企んでいるのだろうか。
まぁ、特に何もないなら良いかと思い、風見に持って帰ってほしい潜入調査で着た服をまとめ始めた。
「降谷さん・・・洗面所に・・・化粧落としが・・・」
「・・・は?」
こいつ・・・人ん家の洗面所の扉を勝手に開けたのか。
上司の家だぞ?なに考えてるんだ。
しかし、ここで慌てたら逆効果だ。落ち着け。
いくら風見でもバレるわけにはいかない。
「それがどうかしたか」
「いえ、別に・・・」
「君には関係ないことだ・・・知らない方がいい」
少し睨みを利かせると、焦りまくっている風見。
こいつがに好意を持っていることは知ってる。
よくをチラチラ見ていたり、ニヤけ顔を隠せていない時があるからな。
その姿に腹は立つが、注意をしたり僕達が交際していることを言ったりはしない。
そんなことをしたら仕事がしづらくなるのは目に見えている。
相当落ち込むだろうな、風見は。
「降谷さん・・・プライベートを無粋に探り、申し訳ありません」
「あー・・・風見、何か勘違いしてないか?」
「いえ!別に自分は、女の髪も歯ブラシもヘアピンも何も見ておりません!!」
・・・全部見てるじゃねぇか。
必死に言い訳をする風見を連れて、再び洗面所へ行く。
「これは僕の髪だよ。理髪のプロでも扱いづらい髪質で、いつも自分で切ってるんだ」
「そ、そうなんですか・・・」
「ヘアピンは散髪用、歯ブラシは今朝交換したから1本は掃除用。他に疑問点は?」
勘違いをしている風見に呆れ顔で聞くと、首を思い切りブンブンと横に振った。
はぁ。納得したか。今説明したことは事実だから何の罪悪感もない。
これからは疑われないように、細心の注意を払わないとな・・・。
「では、これで失礼します」
「あぁ。大切な血税だから、服は地味で安価な物でいいからな」
「はい、わかりました!」
そう言って帰って行く風見を見送った。