第2章 【安室 透】余裕のない裏の顔
頭上に刺さる視線が痛い。
何をそんなに怒っているのだろうか。
話に夢中で注文を取り忘れていたのは申し訳ないけど・・・。
「じゃあ、ミルクティーとチーズケーキにします!!」
「あたしも同じのお願いしまーす!」
「私はアイスコーヒーとハムサンドください」
厨房に戻った安室さんにハムサンドをオーダーすると、取って付けたような笑顔を返された。
そんな態度を取られても私は何も悪いことをしていないので、気にせずドリンクを先に3人に出す。
別荘に行く話は本気らしく、早速日程を決めているようだった。
「俺はいつでも行けるよ。さんの都合の良い日で」
「さん、この連休空いてますか?」
「えーっと、その日は・・・
「その日は彼氏さんとデートするって言ってませんでしたか?」
ハムサンドとチーズケーキを持った安室さんに再び話を遮られる。
その、目に光が灯っていない笑顔・・・どうにかしてもらえないだろうか。
というか、デートの予定などないのだけど・・・。
「えっさん・・・彼氏いるんですか?」
「あー・・・うん。最近できました」
「きゃー!いつの間に!!どんな人ですか!?」
どんな人・・・・・・チラッと安室さんに視線を向けると彼もこちらを見ていた。
こんなにお客さんがいる中で、本当のことは言えるわけがない。
口の前に人差し指を当てて「内緒です」と、答えた。
「気になる〜!!素敵な人なんだろうなぁ!」
「あの・・・さん!彼氏さんがいても、テニス・・・してもらえませんか!?」
水嶋くんの真剣な顔。
彼の気持ちには応えてあげられないけど、園子ちゃん達と一緒に遊びに行くくらいなら全然構わない。
恋人の彼はいつも忙しそうで、ポアロの出勤日以外は滅多に会えないから。
「もう、水嶋くん。ダメだよ、諦めなって」
「あはは。大丈夫だよ。今度の連休に行こうか!」
「本当ですか!?よっしゃ!!」
ガッツポーズをして喜んでいる水嶋くんが微笑ましい。
若いっていいなぁ。
「戻りましたー!はぁ、遅くなってごめんなさい!」