第2章 【安室 透】余裕のない裏の顔
「私達がさんの話をしてたら気になって、ポアロに来たらしいんです!それで実際に見たら一目惚れしたとか言って!!」
「だーかーらッ!!言わない約束だろーが!!」
「・・・・・・一目惚れ?」
楽しそうに口を大きく開けて笑っている園子ちゃんと、焦って先程よりも顔を真っ赤にしている水嶋くん。
一目惚れって・・・私だいぶ年上だけど、高校生に好きになってもらうことなどあり得るのだろうか。
「きゃー!!安室さん頭いいっ!!」
「えーずるい!私も教えてください!!」
・・・・・・あり得るか。
あの子達も安室さんが好きで、毎日のように会いに来てるんだもんね。
純粋に羨ましい。
あんな風に堂々と恋愛を楽しんでいることが。
私達の場合、仕事に影響が出るからと付き合っていることは秘密にしている。
安室さんは「言っても良い」と言ってくれたけど・・・女子高生に恨まれるだろうし、お客さんが減ったらお店に迷惑を掛けてしまう。
「さん、今度テニスしませんか?水嶋くん、テニス部ですごく強いんですよ!」
「へぇ!いいね、久しぶりにやりたいかも!」
「え!!マジっすか!?」
「うちの別荘でやりましょうよ〜!可愛いスコート貸しますよ!」
テニスは私も学生時代にやっていたから興味がある。
さすがにスコートを穿くのは年齢的に痛いので遠慮するが・・・。
水嶋くんが目を輝かせて部活の話をしてくれている。
3年生が引退して、部長を任されているらしい。
「さんが良ければ俺が教えますよ!!」
「本当?ありがとう。じゃぁ・・・
「こんにちは。ご注文は伺っていますか?」
突然、真後ろから声がして、ビクッと肩が跳ねてしまった。
恐る恐る振り返ると笑顔の裏に黒いオーラを纏った安室さんが、私と水嶋くんに視線を向けている。
「あ!ごめんなさい!まだ伺ってませんでした!!」
「すみません。俺が話に夢中になってしまって・・・。さんのおすすめはどれですか?」
「あ、はい。全部美味しいんですけど、ミルクティーとチーズケーキが好きかな。でも、安室さんが作るハムサンドがすごく人気ですよ!」