第1章 没の想い
勇気を持ってもう一度見に行った雨栗さんのグループには、知らない誰かが二人映っていた。やはり苦しい。その隣にいたのは俺だった可能性もあるのだろうかと考えてしまって。
そんなはずはないのに。
見ると雨栗さんの隣にいる一人が、俺と境遇がよく似ていて驚いた。録音した自分の声を聞いたこともあるが、自分とよく似た話し方をしている。自己分析をこんな場面でしたくなかったが、あまりにも、よく似ていて。
彼はそのゲーム内では初心者だったらしい。だがその頭の良さと明るさが人気を呼び、俺とは大違いなのがよく分かる。あ、俺がここにいなかった理由はこれだと思い知ってしまうだけだ。
謙虚だなんて誰かが言った。謙虚以外に俺が出来ることなんてないじゃないか。雨栗さんとそのグループは、俺がうかうかしている間にあっという間に天の人となったんだ。雨栗さんの実力ならいずれ上に行きそうなタイプだとは思っていたけど、まさか建築界隈のトップに上がるなんて。
それでも願ってしまうこの気持ちはなんだろう。言葉にしないように蓋をした。動画の最後で歌が流れた。それもその人の歌声だろうということがすぐに分かった。歌も上手いとか、俺の入るところは何もないんだと理解しなくちゃいけなかった。