第1章 没の想い
久々に生配信をすると、思った以上に視聴者が集まって内心俺は驚いた。
そこで作業をしながら俺が話を振ったのもあるんだが、雨栗さんの話をした時に、その多くの視聴者たちが雨栗さんから来たという人だらけで、俺もあの人の影響の波を受けた一人なんだな、と呑気にそう思った。
俺とあの人を比べるなんて天と地程場違いなんだが。
もう何年も前の話である。忙しさを理由にしてサボっていた配信も動画投稿もなかった期間より前の話。確かに俺は、あの人と撮影はしたのだった。
結果的に俺がダメ過ぎて没になった動画。俺にはゲーム実況なんて向いていないのだ。そう言い聞かせて、何度も謝って、それで疎遠になって。
雨栗さんがグループを立ち上げたという話は聞いていた。何度か見に行ったことはあったが、そこには俺と撮影した動画どころか、俺の知らない誰かと映り込むゲーム内に、何度心を苦しめられたことだろうか。
俺は、会ったこともない雨栗さんに、尊敬以上の想いを抱いていたのだ。
けど、俺は大学生だったのだ。大人って言ってしまえば大人なのだが、まだ子どもっぽい部分もあったのかもしれないと言われれば否定出来ない。俺は、一歩引いてしまったのだ。