第12章 偶然の幸運
いつも通り仕事は定時で終わり、夕飯の買い物をしようと帰宅途中にある大型店舗へ寄る。
そこは服屋や菓子屋などが一緒になったデパートとなっていて、私が食品売り場へ足を踏み込んだ時にそれは鳴った。
カランカラン!
「えっ」
驚く間もなくパーンっと打ち鳴らされるクラッカー。それから周りにいた店員さんたちが一斉におめでとうございますと言ってくるものだから、私の頭の中は大混乱だ。
「今日はこの店の十年記念祭を開催していまして!」と店長らしき人が出てきて説明をする。「今日開店してあなたが一万人目のお客様なのです! おめでとうございます!」
「え、そうなんですか……?!」
まるでドラマや漫画みたいな展開。こんなの初めてだ。
「はい! そんなありがたいお客様にはこちら! 一万円引き換え券をお渡しします! 千円ずつ分割して使えますので、どうぞ、今後ともご贔屓にして下さい〜!」
と店長は私に引き換え券を渡してくれた。本当に一万円分の引き換え券みたいだ。夢なんじゃないかと疑ってしまう。
とりあえず、私はありがたく引き換え券を受け取り、浮いた食費は服屋で消耗しようと考えた。
といっても、私のお気に入りのブランドはとても高く、そんなに多く持ち合わせてはいないし今日は買えないかなとも思ったので、見に行くくらいなら、と覗いた服屋さんで目を疑うものが。
私のお気に入りのブランド品が半額で売られていた。
というのも季節が変わるからと品替えのために値引きしたと書いてあるが、それにしてもバックが半額になるとは思わなかった。間違っているのかと何度も値引きのシールを見る。かなり渋ったが、こんなチャンスはあまりないので買うことにした。来年の暖かくなる頃には、これを持ってどこかに出掛けたいな。
気分がよくなった私は、なんとなく菓子屋にも足を運んだ。そこは洋菓子店で、ガラスケースにはずらりとケーキが並んでいる。
私はショートケーキかチョコケーキかでかなり悩んだ挙句、ショートケーキを買って帰った。それから買ったものを振り返ると、随分買ったなぁと帰路についた。