【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第3章 直哉との3年間②※
ああ、チラチラ見られている視線が痛い。
この人は目立ち過ぎる。
ななはハラハラしながら廊下を歩いている。
「ねぇ。」
…………しつこい……。
ななは振り返って、その男に声をかけようとした。
「悟くん。」
直哉の聞きなれた声に胸が締め付けられた。
その声のトーン。
息の吐き方。
全てが直哉の不機嫌な音調だった。
「悟くんはこっちやで。」
ななとは違う方向に直哉は悟を導く。
ああ………私は……。
今何を失ったのだろう。
近付いて来る直哉に、ななはその心境を知られないので精一杯だった。
直哉がななの横に並んだ。
その緊張感から胃から全てのものを吐き出しそうになる。
「………久しぶりだね。」
悟がそう言った笑みの向こうには、直哉のいつもの愛想笑いがあった。
それがこの3人の初めての会話だった。