【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第18章 始まりと終わり※
日下部さんが何か叫んでいた。
多分それは私の名前で。
私はその日下部さんを見ながら、思い出したのはやっぱり。
雨蛙を私に渡すあの少年だった。
術式に付与された斬撃は、ななの身体を切り刻んだ。
痛みに顔を歪めながら、自分の身体が倒れる瞬間はまるでスローモーションの様だった。
時間がゆっくり流れている様で、ななは手を伸ばした。
上げた傷だらけの自分の手は空を切って。
その後視界は真っ暗になる。
「………………。」
「悟?」
高専の鳥居を歩いている最中に、悟はピタッと足を止めた。
空を見上げた悟に、傑は不思議そうに名前を呼んだ。
「……いや………。」
悟は一言そう言うと顔を戻して、また歩き始めた。
「何でも無い。」
そう言って、再び傑の後ろを歩き出した。