【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第16章 直哉と悟※
「あー…悟くん…ちょっとええ?」
ななの部屋の帰りから悟を見かけた直哉は悟に声を掛けた。
直哉から声をかけられるなんて、十中八九ななの事だろう。
それが分かっていても、悟は直哉に振り返る。
「…またよく来るようになったね…。」
悟は笑って直哉に言ったが、内心は面白く無い。
自分がななの部屋に行く頻度が減ったのだから。
(さっさと手ぇ出しときゃ良かったか…。)
面倒くさそうに頭を掻いて、そんな思いが過った。
目を伏せた時に、泣きながら東京に帰って来たななの手を握って、一緒に過ごした時間を思い出した。
手を出せば良かったと言う思いは、その記憶と一緒に一回の瞬きで消えた。
「…悟くんはもっとグイグイくるか思うとったわ。」
「……………。」
意外そうに直哉が言って、悟はその言葉に愛想笑いを含んだ。
「まぁ…どない口説いても、ななは靡かへんけどなぁ。」