【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第14章 潰れる心※
直哉の離れていく背中を見送って、やっと安堵の息を吐けた。
「っ…はっ…ぁ……。」
それでも気持ち良く息を吸えなかった。
緊張感から解放されたはずなのに、まだ心臓が痛いほど鼓動を高鳴らせている。
その理由は、簡単にななの脳に伝達された。
直哉が。明確な殺意を。ななに向けた。
冷や汗がポタポタと流れた。
こんな殺意を向けられたのは初めてだった。
悟から与えられた任務でも、呪霊は格下で。
この様な絶対的な強弱の呪力の経験をした事が無かった。
ななは初めて、訓練された中でも、悟の加護の中にあった事を初めて知った。
体内から流れる血が涙で薄まった。
禪院家での中で、術式こそがその地位を決めていたのは知っていた。
術式どころか、呪力を持っていないこの少女を。
直哉が冷遇する事なんて想像出来たはずなのに。
「はっ…あ…っ、。」
なのに、何故今その直哉の姿に胸が痛いのか。