【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第14章 潰れる心※
(……お父さんとお母さんと一緒に来れば良かったかな…。)
蝉が煩く無く、竹林の道を抜けて、禪院家の大きな閉められた門を見上げながら、ななはそう思った。
しかし。祝賀の参列にはまだ時間があった。
何故なら直哉のお達しは、祝賀に参加する事では無くて、今まで通りに、その客を迎える準備をする様にとの事だったから。
だからななはいつも通り、その正門をくぐる事は無い。
使用人が通行する裏口から入るのだった。
慣れた様に、ななは使用人入り口から禪院家の庭園に入った。
そして、その場で見た光景に、目を見開いた。
「……ゔゔ……。」
くぐもった声が力無く聞こえた。
その声を発しているのは。
直哉の足元に蹲っている、幾許無い少女だった。
「……何してるの……直哉くん……。」
サーっと顔の血の気が引いて、低い声が漏れた。