【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第13章 夏の日
きっと、どういう風に接して欲しいかなんて、なな自身分かっていない。
ただ虚しく空いた心の隙間を埋めて欲しいだけかもしれない。
そして、それは自分に都合のいい愛情であって欲しいはずだ。
ななが何を望むのか分かっているのに、素直にその愛情を注ぐだけは出来ない。
ななから見え隠れする、あの男の影がいつも悟を刺激する。
「ななおいで、抱いてあげる。」
悟がそう言って、腕を伸ばしても、機嫌を損ねたななは素直に腕の中にこない。
全く、子供の様だ。
自分の元にこないななに、しょうがなく手を伸ばすのは悟の役目だった。
少し拗ねているななを抱き締めて、悟は目を閉じた。
今はまだ、これだけで良い。
その内この腕を掴むしかないと、ななは気付くだろうから。
その時に掴まれるのは自分だと。
悟はそう思っていた。