【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第12章 五条悟⑤
貴方がずっと私を好きだと言っていた様に。
私もずっと貴方が好きだった。
自分で気が付いた気持ちは、涙になって体からながれていく。
嗚咽で声が響かない様に、グッと堪えた。
涙で視界が滲んでも、悟がその手を握ってくれたから歩いていた。
「……なな……。」
瓦礫の中から直哉の声が聞こえた気がして、その方向を向こうとした。
すぐに悟の手がななの目元を塞ぎ、その視界を遮った。
「…今が1番辛いから…。」
耳元で聞こえた悟の声に唇を噛み締めた。
今度は悟に拐われるなでは無くて、自分でゆっくりと禪院家を去って行く。
そこに直哉を残して。
辛かったし、憎かった。
直哉にも自分と同じくらい傷付いて欲しかった。
だけど今は。
こんなにも胸が痛かった。
「さようなら、直哉くん。」
聞こえているかどうか分からなかったけど、ななは直哉に向かって言った。
さようなら。
本当に好きだった。