十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第5章 5
潤さんの部屋に初めて泊まった日の翌朝、潤さんから貰った名刺。
最初は気付かなかったけど、そこには多分…だけど、ドラァグクイーンとしての潤さんの源氏名と電話番号が書いてあって…
内心、ちょっと笑っちゃったんだけどね。
だってさ、〝潤子〟ってさ、まんま過ぎて笑うしかないじゃん?
大体、見た目からして絶対〝潤子〟って感じじゃないし。
だから、ちょっぴり緊張しながら初めてかけた電話で、多分お酒も入ってたんだろうけど、ビックリするくらい甲高い声で「潤子で〜す」って言われた時には、緊張なんてどこへやら…大爆笑してしまって。
あとでめちゃくちゃ怒られたけど、その時の電話がきっかけで、僕たちは〝お友達〟としての関係をスタートさせた。
勿論、潤さんが本気で僕と〝お友達〟になろうとしている、なんて僕も思っちゃいないし、〝お友達〟になった先に何を求めているのか、僕にだって分かってる。
でも僕の心には、ずっと翔くんがいて、翔くんへの想いが消えることはない。
それが分かってるから、潤さんは僕に〝お友達〟以上の関係を求めてくることは無かったし、「待つ」とも言ってくれた。
潤さんと過ごす時間は、凄く居心地が良かったんだと思う。
僕はそんな潤さんの優しさに、自分でも気付かないうちに甘えていた。