十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第4章 4
「いつこっちに帰って来んのか、分かんないんでしょ?」
視線は前を向いたまま、ハンドルを片手で握る潤さんが言う。
「ま、まあ…」
「追いかけようとは思わないの?」
「それは…」
潤さんに言われるまでもなく、何度も追いかけようと思ったし、いつでも翔くんの元に行けるように、荷物だって纏めてある。
でもさ…、母ちゃんのあんな寂しそうな背中見ちゃったら、一人残して行く…なんて出来ないじゃん。
「まだ好きなんだろ、その彼のこと」
「うん…」
好き…なんて簡単な言葉では説明出来ないくらい、僕は翔くんが好き。
「キツくない?」
「何…が?」
「いつ帰って来るかも分かんない相手を、ずっと待ち続けるのがさ…」
確かに潤さんの言う通り、翔くんが旅立ってからまだほんの数週間しか経っていないけど、このままずっと寂しさに押し潰されそうな感覚のままでいるのは、正直キツい。
「もしこのまま帰って来なかったら?」
「そ、そんなこと…」
〝ない〟…とは言いきれない自分が悲しくて、僕は膝の上に置いた手をギュッと握った。
暫く沈黙が続き、気付くと車は家のすぐ側まで来ていて…
「ここで大丈夫です」
僕が言うと、潤さんはポケットから名刺を取り出し、僕に差し出して来た。
「まずはお友達から始めようか」
って、意味不明な一言を添えて…