十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第8章 8
雅紀さんに送って貰って家に帰ると、母ちゃんがパートを終えて丁度帰って来たところで…
初対面の二人は、お互いペコペコと頭を下げあってて、何だか少し笑えた。
「じゃあ、明後日迎えに来るから」
「うん」
「ちゃんと起きときなよ?」
「分かってるって…」
そんなに年が離れてるわけじゃないけど、雅紀さんはたまに父ちゃんみたいだ。
…なんて言ったら、きっと怒るだろうから、絶対言わないけどね?
玄関先で雅紀さんを見送り、家の中に入ると、母ちゃんがやたらとニヤニヤしていて…
「なに、気持ち悪いなぁ…」
僕が言うと、母ちゃんは肘で僕の脇をツンと突っついた。
「あの人、あんたの新しい恋人?」
「はあ? 違うよ…」
「なんだ違うの? あの人なら私も大歓迎だったのに」
「だいたい、雅紀さんにはちゃんと好きな人いるし…」
「あら、それは残念…」
母ちゃんが心底残念そうに口を尖らせると、お気に入りのエプロンをかけ、キッチンに立った。
雅紀さんなら…って、翔くんや潤さんに失礼過ぎない?
ってゆうか、母ちゃん僕のことなんだと思ってんの?
僕、そんなにとっかえひっかえ出来ないし…
僕は溜息を一つ落としてから、洗面所に向かい手を洗った。