第31章 不思議な余韻
「どうした、おんりー」
俺がゲームを操作をせずにそこでじっとしていたからか、ぼんさんが心配そうに近付いて来た。なんとか誤魔化そうと頭を捻るのだが、急展開し過ぎて言葉が出てこない。
「もしかしてミュートなんじゃね?」
という、MENの指摘に通話アプリを確認すると、確かにミュート設定に切り替わっていた。いつなぜミュートにしたのか分からないが、これなら喋る理由が出来そうだ。
俺は自分のゲーム内の持ち物欄を開いた。そこにはロッドとパールが入っていたので、俺は意識がなかった前、ネザー要塞に行っていたのだと察した。
「ぼんさん、おんりーイジメたんじゃないですか?」
「いやいやいや、今回は何もしてないのよ、今回は!」
「あはは、ぼんさん、今回はってなんですか、今回はって」
ドズぼんのいつもの会話におらふくんがケラケラ笑ったところで、俺はミュートを解除した。
「すみません、ミュートになってたみたいです」
と言い訳して。
「へぇ、おんりーちゃんがミュートしちゃうなんて珍しいね」
「ぼんさんはよくミュートミスやりますからねぇ」
「そんなしょっちゅうやってないよ?! ねぇ、そうでしょ?」
「あはは、やるかも分からんですよ〜?」
案外ぼんさんも鋭い点に気が付くが、MENのよく分からないワードで誤魔化せたみたいだ。おらふくんが楽しそうに笑うので俺の話はより遠くへ流れた。
「じゃあ行こうか、エンドラ討伐」
「は〜い」
「せやね♪」
「行きましょうか」
「はい」
ぼんさん、MEN、おらふくん、ドズルさんに続いて俺はそう返事をし、エンダーパールをエンダーアイへクラフトした。
「あれ、おんりー、少しスキン変わった?」
「え」
おらふくんの言葉に俺は少し驚きながら急いで三人称視点に変えてみた。
俺のゲームスキンの胸にあるはずの赤いネクタイの部分だけがぽっかり抜け落ちていたのだ。
「あれ、あげたのは花なんだけどな……」
「おんりー、どうした?」
思わず呟いてしまった言葉に、今度はドズルさんが聞いてきた。
「いえ、なんでもないです」俺はエンダーアイへ持ち変えた。「では投げます」
「お願いします〜」
俺たちはエンドラ討伐へと出発した。
おしまい