第1章 出会い
なんだこれ、脈ありか?
わざとらしく「大丈夫?顔赤いけど、お冷もらうか?」なんて声をかければふるふると首を横に振って否定の意を示す。
「すみません、その…手おっきいなと思って。」と思わぬ返答が返ってきた。
「そうか?」タブレットを操作していた手を翻し、手のひら側をさんに見えるように向ければ、嘘ではないのだろう。
うっとり、という言葉が最適な表現で俺の手を見入っている。
手フェチかだろうか、今まで男に興味ありませんみたいなツラしといて、この表示は反則だろ。
平均よりは大きいと思っていたがこんなところで役に立つとは。
「ごめんなさい、じろじろ見ちゃって…。失礼ですよね、」
「いーえ、減るもんじゃないし。」
タブレット端末からコース料理以外の刺身の盛り合わせを勝手に追加して注文する。少しだけいたずら心に火が付いて「今日あいつの奢りだから、好きなの頼んでいいよ」とさんの視界俺の手がに入るようにタブレットを渡す。
「え、えぇ?」
新しいドリンクが来る前に残っていたビールを飲み干してテーブルの端へ寄せる。これもしっかり手が映るように。
困惑しつつもしっかり照れてるようで、天井を見上げたりタブレットを間近でみたりして頑張って視界に入れないようにしているのがうかがえる。
無言の攻防は一次会が終わるまで続いた。
「二次会どうするー?」
「ダーツバー行こうぜ!俺めっちゃうまいから!」
「えー、飲み足りないからもう一軒行こうぜ。」
「遅れてくるからでしょー?もー!」
「俺はパス」
人数合わせの役目は終えたし、友人も狙っていた子といい雰囲気だ。
もう必要ないだろう。
そんな心情をさっしてか友人はニコニコしながら
「黒尾!今日はマジでありがとな!急に呼び出して悪かった!!」
「んー。」
たぶんぜんぜん、悪いとは思ってないだろうが建前の挨拶をして帰りやすくしてくれたようだ。
「ちゃんはどうするー?」
「あ、私もこの後用事あるから、ここで。」
「そっかー残念、じゃあまた来週、会社でねー」
「うん、誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」
騒がしかった4人が繁華街に消えて行くのを見送って、しんと静まり返る。
「俺駅だけど、さんは?送ってこーか?」
「えっ、と…。」
「あ、用事あるんだっけ、1人で行ける?」