第1章 出会い
こんな遅い時間からなんの予定かは分からないが、歯切れの悪いさんに何か事情がありそうだ。
家を知られたく無いとか、この後男の家に行くとか、俺の事を警戒しているとかそんなとこだろう。
送ろうか?1人で行ける?と選択肢を作ってやれば答えやすいし、警戒しているだけならば人通りの多いところで別れればいい。
しかし返ってきた返事はそのどちらでもなかった。
「あの、ホテル行きません、か…?」
「はい??」
突然の申し出に動揺を隠せなくて、隣にいるさんを見ると頬を真っ赤に染めていて聞き間違いではないことがわかる。
「俺と?なんで?」
「手が、おっきいから」
「え、そんな理由?」
手フェチっぽいということは先程の飲み屋で明かされたが、手が大きいからって理由で初対面の男をホテルに誘うだろうか?
真面目っぽそうな顔で、丁寧なしぐさで、澄ました声で、ずっと優等生で生きて来た日本代表みたいな顔した子が?
「私、セックスでイッたことなくて…。こんな体型だからか、今まで付き合った人の、その…アレが、小さく感じてしまうんです。」
度肝を抜かれる俺をよそに
「手が大きい人はアレも大きいって聞いたことあって…。黒尾さんかっこいいし、えっちうまそうだし、Sっぽそうだし…。」と尻すぼみになりながらつらつらと理由を述べている。
「こ、声も低くてかっこいいし、筋肉質な人すごいタイプで、私のこと、イかせてくれるかもって…。」
「じゃあなに、俺の手見てからずっとそんな事考えてたの?みんなの前で?俺に犯されること想像して、嘘までついて2次会断ってワンチャン狙ってたわけ?」
図星を突かれて真っ赤になりながら俯く目の前の女に支配欲が込み上げてくる。
何が真面目そうだ。人は見かけによらないなんて言うがそんなレベルではない。
「ヘンタイかよ」
「っ、!」
耳元で囁いてやれば耐えきれなかったのかうっすら涙を浮かべながら上目遣いで見上げてきて「お願い、します。お礼に私にできることなら何でもしますから…!」と悲願してくる。
頭を下げる女にこれから何をしてやろうか、考えるだけで腹の中の黒い渦みたいなものがぐるぐる回って全身を駆け巡るようだった。
「いいぜ、その話乗っても。」
「っ!ありがとうございます!」