第1章 出会い
指定の時間より少し前に着いてしまったので近くのコンビニで時間をつぶしつつ、友人にもういる?とメッセージを送る。
肝臓にいいらしい、呑む前に飲む!という謳い文句のドリンクを一応飲んで苦手ではないが、得意でもないアルコールに備える。
空き瓶をコンビニの店内ゴミ箱に捨てて携帯を見ると、今着いた。とメッセージが来たので合流することにする。
店の前にいないのを確認してから店内に入るとスタッフが来て友人の名前を出せば丁寧に案内してくれた。
半個室になっている1番奥のテーブル席に6人分の食器が並べられていて、端に座る友人が俺の顔を見るなり「黒尾ー!!!来てくれると信じてたぜー!!」となかなかデカめの声で挨拶をしてくる。
「うっせ。」
迷惑でしょーがと軽くどついて数ヶ月ぶりに会う友人と最近どぉよ?なんて当たり障りのない話題を振りながら隣に腰掛けた。
しばらくして女の子3人組が到着した。どうやら待ち合わせて来たようで先頭にいた笑顔の似合うショートカットの子が「あ、いたいた!久しぶり!」と友人に声をかけている。
この子がきっと女子側の幹事なのだろう。文化祭の実行委員とかやってそうだな、なんて勝手にイメージする。
次に入って来た子はゆるふわの髪に女の子らしい仕草とおっとりとした声が特徴の子で、あぁ好きそうだなと友人をチラッと見れば案の定鼻の下を伸ばしながら「久しぶりだね、俺のこと覚えてる?」なんて声をかけている。
最後に入ってきたのは女の子にしては背の高い子だった。研磨くらいあるかもしれない。雑誌で見たファッションモデルのようなスタイルのよさでノースリーブのブラウスとウエストの位置で履いているショートパンツが手足の長さを強調していた。
手に持った春色のトレンチコートをハンガーにかけながら「上着かける人いますか?」と質問している。
なんだか暑い気がしてジャケットを脱ぐ。
「ハンガーちょうだい。」
「おかけしますよ。」
「ありがと」
お言葉に甘えてジャケットを渡す。
いつも脱いだら椅子の背もたれにかけておくジャケットが丁寧にハンガーに吊るされて不思議な気分だ。