第8章 Jeremiah29:11
「…いつもおまえに見られてるから、見てやろうと思って…」
「なにそれ子供か」
俺があんな事言うから、やりかえしてやろうなんて…
そんな元気が出てきたことが嬉しい反面、確実に別れの時間が近づいてきていると暗澹たる気持ちになった。
「それに…」
「ん?」
いつまで経っても食べないから、智の前に置いた小皿にキャベツを盛ってカキフライを3個ほど放り込んだ。
「ありがと」
「うん。熱いうちに食べちゃいなよ」
「うん…」
そう言ってから、自分の皿にキャベツを盛っていたら、やっぱり俺の事見てる。
正確に言えば、俺の手を見てる。
「なに…?どうしたの?」
「あ、いや…」
「なんか変だった?」
「違う。逆だ」
「え?」
「…翔のイタダキマスも、箸を使う様子も…すごく綺麗だ」
「綺麗って…」
「俺の周りには、そんな綺麗に食事ができるやついない」
真顔でそんな事言うから、急激に顔に血液が集まるのを感じた。
「なっ、何いってんだよ…」
「前から思ってたんだけど、翔、やっぱり育ちがいいんだな」
「そんなことない…」
母親には常に怒られてばかりだった。
その中にはマナーに関するものも多かったけど…
あのときは煩いとしか思えなかったけど、今となっては感謝するしかない。
「いつも、怒られてばかりだったけどね…」
「家族に?」
「うん…」