第8章 Jeremiah29:11
買ってきたカキフライをオーブンで焼いて。
たっぷりと皿に盛ってダイニングテーブルに置いた。
カットレモンを入れた小鉢と、ソースのボトル。
千切りキャベツを入れたガラスのボウルと、白飯山盛りにしたご飯茶碗。
「準備できたよ。食べよっか」
智は無言でよだれを垂らしそうな顔をしてる。
「そんなに食べたかった?カキフライ」
「だって今、旬じゃないか…」
「そう?でも生じゃないからなあ」
「何いってんだ。カキはフライが一番旨いんだぞ」
そうかなあ。
俺は生の牡蠣を海水から引き上げて、その場で開いてもらって食べるほうが好きだけどな。
まあ、今の智には絶対生牡蠣なんか食べさせられないけど。
刺された時、どんなウイルスや菌に感染したかわからないから…
またあんなことになったら、今度こそ後遺症が残ったりするかもしれない。
「…ちなみに、生牡蠣はたべたことあるの…?」
「ある。でも火が通ってる方が好きだ」
智、火の通った牡蠣のほうが好きなんだ。
そんな自分との違いを知ることすら嬉しく感じてしまうのは、もはや病気みたいなもんだと近頃は思う。
「じゃあその旨いの食べようよ!」
「ああ、イタダキマス」
そう手を合わせてモゴモゴ言ってから、俺を見た。
「ん?」
「おまえもカキにイタダキマスしろよ」
カキフライが好きだからって、変なの。
でもそんなところも、愛おしいなと思う。
「いっただきまーす!」
いつものように手を合わせてから箸を手に取ると、じっと俺のこと見てる。
「……?食べないの?」
「あ、いや…」
「なんか俺、変だった?」
「いや、そうじゃない」
「んじゃどうしたの?」