第8章 Jeremiah29:11
ずっと傍に居たい。
ずっとこうやってふたりで…
「ごはん、買ってきたよ」
「ああ」
「準備するから、リビング行く?」
「行く」
ベッドから起き上がるのを手伝って、智の手を取る。
そのままリビングまでゆっくりと歩く。
介助するのも慣れてきて、ふたりでずっと一緒に歩いてきたかのように、意思の疎通にも言葉がいらない。
「あっ…」
智の足が縺れてバランスを崩した。
咄嗟に抱きとめて事なきを得た。
「あっぶな…」
「…すまん」
「ううん。もっとしっかり掴まっても大丈夫だよ?」
「それじゃいつまで経っても一人で歩けないだろ」
「リハビリの時期が来たら言うよ。それまでは身体を甘やかさないとだめだよ?」
「ああ…」
少し不満げな顔と声。
智は早く出ていきたいんだろうな…
それは当然のことなんだ。
だけど、寂しい。
リビングに入って、いつものダイニングセットの椅子に智を座らせた。
「準備するから待ってて。今日はカキフライ買ってきたから」
「なんだって!」
「智、好きでしょ?」
「言ったっけ?」
「前に一緒にテレビ見てた時、よだれ垂らしそうな顔してた」
「…俺の顔を見ないで、テレビ見てろよ…」
照れながら俺の額をぺちっと叩いた。
「だってあんまりにもいい顔するからさあ」
「見るなってば…」
いつまでもこんな時間が続けばいいのに。
願わずにはいられない。
早く元気になって欲しい。
だけど動けるようになったら俺の家を出ていってしまう。
そうなったら、もう二度と会えなくなるかもしれない。
いや…確実に会えなくなるだろう。