第8章 Jeremiah29:11
年頃の好奇心で、こんな世界があるということは、知ってはいた。
だけど鏡花水月のように、どこか遠く自分には手の届かない世界の話だと思っていた。
それが、パンドラの箱を開けてしまった。
スマホをきっかけにして、自分の持っているタブレットやパソコンからもそういう世界に繋がれることを知った。
知ったら止まらなかった。
自分だけだと思っていた世界に、これだけたくさんの人が居たのかと。
死ぬほど嬉しかった。
同じ性癖の大人と会い身体を開くまで、それほど時間はかからなかった。
すぐに頻繁に祖父母の残したマリーナサイドのマンションに泊まるからと、外泊を重ねるようになる。
本当にひとりになりたい時は実際にマンションに逃げ込んでいたが、実家から距離もあるし外泊の言い訳にはうってつけだった。
一度だけ酒に酔っ払った勢いで、男を連れ込んだ。
祖父母との思い出を汚しているようで、正直興奮した。
でも、事後の罪悪感が凄すぎて、二度とすることはなかった。
祖父母は俺のことを愛してくれた。
櫻井の跡取りだということもあったとは思うが。
肉親の愛というのは、ああいうものだというのは祖父母から学んだ気がする。
実の家族からは学べなかった。
そうやって…
俺は俺を、汚し続けた。
家族を蔑ろにしながら。
身体を安売りして、自分を安売りして。
進んでおもちゃになって、人をおもちゃにして。
そして深い快楽に耽った。