第8章 Jeremiah29:11
「どんな事件だったかっていうことがわかればいい」
「でも、翔…」
「うん…犯人は、その息子じゃないっていうのは、俺は信じてるけど…証拠がないから…」
「証拠…まあ、それがないと無実だって立証もできないけど…」
また潤はペンで髪を掻くと、手帳を閉じた。
「まあ、調べてみるよ。これもいい勉強になると思うし。でもあまり期待しないでよ?」
「すまん…!」
思わず伏し拝む形で潤に礼を言うと、目を丸くして驚いている。
「あ…」
「翔…本当に、その息子が犯人じゃないって信じてるんだな」
「ま、まあ…」
ふっと笑うと、コーヒーを啜った。
二口ほど飲むと、目を閉じて味わっている。
「好きなの?その人のこと」
「ぶっ…」
飲みかけのお冷を全部出してしまうところだった。
「なっ…なにっ…」
「ほんと昔から翔は、バレバレなんだよ…」
顔を真っ赤にして笑いを堪えている潤に、なにも言えなかった。
高校からの付き合いだけど、今でも親友と言える関係でいられるのは、潤は俺の性癖のことも承知の上だからだ。
思えば俺がゲイだとバレたときも、潤が見破ったんだった。
そんなに俺、顔に出るんだろうか。
他の人には言われたこと無いのに。
「隠せないよな、ほんとに」
「言うなって…」
「そんなんで本当に医者になれるのかよ?」
「医者は別だよ…仕事だし…」
「まあ、そうだけどさ…」
目尻に溜まった涙を拭くと、潤は真顔になった。
「気をつけなよ。そんなんじゃ騙されるんだから」
「…わかってるよ…俺だって、半信半疑なんだから」
「さっきは信じてるって言ってたじゃん」
「うるせー」