第8章 Jeremiah29:11
潤の目が、じっと俺を捉えてる。
だけど潤は俺を見てるわけじゃなくて、考えてるんだ。
これは高校生の頃からのこいつの癖だ。
「どうしても、その息子が犯人だと…俺も思えないんだ」
そうつぶやくと、潤はペンで頭を掻いた。
「他になにか情報ないの?」
どうやら乗り気になってくれたようだ。
「父親は会社を経営していて、母親もそこで働いていたようだから大きな会社ではないと思う」
あれから細切れに智が話してくれたことを必死で思い出した。
「未成年の一家殺人事件ね…」
「ああ」
潤のペンが動くのを、不思議な気持ちで見ている。
もしもこれで智の身元がわかったら…
俺はどうしたいんだろう。
「他には?」
「3人亡くなっているんだが、そのうちの一人は娘で犯人と言われている息子の姉だ。当時高校生だったらしい」
メモが終わるとまた俺の顔を見るが、もうこれ以上の情報は持ち合わせていなかった。
「あ…」
「ん?」
「その息子は、現在30歳に近い。だから少なくとも10年以上は前の事件だと思う」
「近いって、翔会ったことあるの?」
ぐっと詰まった。
「いや…ネットを介して知り合っただけだ」
苦しい言い訳だったが、潤は頷いた。
「ああ、だから本名がわからないって…」
「そ、そうなんだ!」
ペンを鼻先に当てて、メモしたものを眺め渡している。
「こんなんでわかるかな…?」