第8章 Jeremiah29:11
潤はルポライターを目指している。
うちの大学は昔からマスコミへの就職が強い。
出身校の強みを最大限活かした進路選択だと言える。
高校までは潤も派手に遊んでいたが、内部進学で大学に進んでからはメディアコムにも受かったし、レポートを書いては、いろいろなメディアに投稿や持ち込みをしているということだ。
意外な一面を持っていることに驚いたが、そういう学生は他にもいたから、潤の大学に入ってからの「就職のための大幅な変容」はあっさりと俺の中では受け入れていた。
「調べて欲しい事件があって」
「へえ。事件」
意外だって顔をして、潤は俺の顔を見た。
「そんなの、翔なら金出して探偵とかに頼めるんじゃないの?」
「そうだけど…」
智のあの事件を、調べたい。
でもこんなにあやふやな情報しか無くて、探偵に頼めるものなのか、よくわからなかった。
それにプロに頼んでしまうと、言い訳が出来ない気がして…
まだ素人のしかも大学生に頼んだら、もしも智にバレてもなんとか言い繕うこともできる気がした。
「あまり情報がないんだ」
そういうと、潤は変な顔をした。
「情報がないって…?」
「その…変に思うなよ?」
「ああ…」
「当事者の名前が、一切わからないんだ」