第7章 1 Corinthians 10:13
「これからは分けなくていいから、回復してくれて嬉しいよ」
「そっか…」
智はなぜだか「ちょっと残念」って顔をした。
そうじゃないのかもしれないけど、俺にはそう見えた。
「回復するのが嬉しくないの?」
そう言ったら、ぽかんとした顔をした。
じゃあさっきの表情はなんだったんだろ。
「嬉しくないわけ無いだろ。風呂だって一人で入れるし」
「ムーニーにもならなくて済むしね!」
「…それが一番だ…」
お腹を擦りながら、また苦々しい顔をした。
「杖かなんか、買ってこようか」
「え?」
「うち、手すりはつけてないからさ…トイレまでなにか支えがあって行けるほうがいいでしょ?」
「まあな」
「松葉杖じゃ傷ひらくから、杖にしようか」
「壁に掴まっていくからいいよ…」
「壁紙汚れるじゃん」
「そんなの気にする?」
「一応。白いから」
「こんなに部屋汚いのに?」
「それは片付ければ済むもん。掃除のが面倒だよ」
本当は週に一回、家政婦さんが来てたけど。
今は智が居るから来てもらってない。
智が使ってる寝室はもともと置いてあるものが少ないから散らからないけど、リビングは散らかってた。
だから入った時、ちょっとびっくりしてたのを俺は見逃してはいない。
「もしかして俺がいるからこんなに汚いのか」
「そんなことないよ…もともと片付けは苦手なんだ」