第6章 Epistle to the Romans 5:12
しかし、あれも何日前だったのか…
夢だったのかもしれない。
そう思うくらい、ここでの生活は静かで。
あの世界から…
いや、過去の俺からも。
乖離していた。
「ごめんごめん。とりあえず、バスローブでいいかな?」
「ああ。ありがとう」
「急に寒くなったからね。風邪引かないように、ちゃんと寒かったら言ってね?」
「ああ……」
翔の手を借りて、パジャマズボンと下着を脱いだ。
全裸になったら翔が頬を染めて、目を逸らした。
……やっぱり、そうなんだよな。
「さ、歩ける?」
「ああ」
翔は俺の手を取って、先に歩き出した。
浴室のドアを開けると、中から湯気が出てきた。
「滑るから気をつけてね」
ゆっくりと床を踏みしめて歩く。
浴室の床は暖かかった。
こんなところまで床暖房があるのか。
「じゃあ、そこ座ろうか」
「ああ」
浴室内は予想よりも暖かかった。
ゴーゴーと音がしているのは、換気扇じゃなく浴室暖房だろう。
「こんなの風邪の引きようがないじゃないか」
「ん?」
「なんでもね」
洗い場の椅子に座らされると、翔は腕まくりをした。
「じゃあ、頭から洗っちゃうね」
「ああ、頼む」
「ちょっと上向ける?」
「こうか?」