第6章 Epistle to the Romans 5:12
翔に支えられながら、ベッドのある部屋を出て廊下に出た。
途端に、床が冷たく少し肌寒く感じた。
気づかなかったが、部屋は床暖や空調が効いていたようだ。
部屋にはエアコンらしきものはなかった。
あの部屋のどこに空調の送風口があるんだ…?
「さ、こっちだよ」
「ああ……」
ゆっくりと翔は歩いてくれて、部屋を出た。
廊下に出ると、幾つもドアが見えた。
…随分広い部屋だな…
どうも窓から見える風景を見ていると、ここは高層マンションだ。それも都心の。
ということは、ここかなり高級物件なんじゃ…
きょろきょろと見渡していると、翔が苦笑いした。
「そんなに珍しい?」
「ああ…まあな」
廊下の向かいにあるドアまで歩くと、翔がそのドアを開けた。
その中は洗面台とドラム式の洗濯機、その奥には浴室があるようだった。
「この隣が、トイレだよ。動けるようになったら自分で行ってね?」
「おお…行くに決まってんだろ…」
「いまは尿瓶野郎だね!」
「なんだその尿瓶野郎って…」
「時々、ムーニー!」
「やめろ」
くすっと笑うと、脱衣所に置いてある椅子に俺を座らせた。
ふうっと思わず息を吐き出した。
「大丈夫?」
「ああ。問題ない」
よかったという風に微笑んで、壁にあるスイッチを翔は押した。
機械の音声が浴槽に湯を溜めると告げて、陽気な音楽が流れた。
「体洗ってたら、溜まると思うから」
「湯に入ってもいいのか?」
「足だけならね」
「むう…」
くすくす笑うと、翔はタオルを棚から取り出した。