第6章 Epistle to the Romans 5:12
それから翔は、俺の上のパジャマだけ脱がせて、厳重に傷をテープなんかを貼り付けて保護した。
「こんなしなくても…」
「だめだよ。ただでさえウイルスか菌で体弱ってるんだから。傷口から何も入れないようにしないとね」
「ええ…まだそんなにしないといけないの…?」
「だから、智の傷は衛生的な環境でついたものじゃないから…」
「でももうだいじょう…」
「智は医者じゃないでしょ」
「おまえもまだじゃねえか」
「う…医大生だもん…」
とかなんとか言いながら、翔は俺をベッドから立たせてくれた。
ションベンの管はこの前取ってくれたら、ベッドの上で足は動かすことはできたんだが、自分の足で立つのは久しぶりだった。
「お…おお…?」
「ほら。平衡感覚おかしいでしょ。ずっと寝てたからね」
「ああ…」
ふらつく体を支えようと足を踏ん張ろうとするが、うまく動かなかった。
翔は、ずっと俺の体を背中に腕を回して支えてくれてる。
それがなんだか…くすぐったいような。
守ってくれているようで、懐かしいような。
「昔の動画でさ…」
「え?」
「宇宙飛行士が、地球に帰ってきた時のを見たんだ」
「…うん」
翔が顔をこちらに向けて、息がかかりそうな距離で俺の顔を見てる。
「車のハッチバックみたいなドアを開けて出てきたら、滑稽なくらい歩けなかったんだよ。周りの地球人に支えられてやっと上半身起こして笑ってんの……」
「地球人…?」
「あ、違うか…NASAの人…?」
「…多分そうだろうね。智には、中の人が宇宙人に見えたんだ?」
「ああ…まあ、な…」
なんか、恥ずかしくなってきた…
一体俺、何の話してんだ。
「…今の俺、それと似てる」
「くっくっ……」