第5章 John 20:11
「ふうん…智がねえ…」
ようやく疑うのを諦めたようで、やっといつもの雅紀の顔に戻ってきた。
「ああ…だから、治療はこの部屋で充分受けられてるし、俺がここにいることも外部に漏れることはない」
ただ、あいつはちゃんとした医者じゃないから。
ちゃんと治るかわからないけど…
あの調子だから、俺のことは外に漏れることはないはずだ。
「ふうん…その割には、長引いてるみたいだけど?」
「刺された場所が悪かったっていうか…どうも傷からなんかのウイルスが入ったみたいだ」
「ウイルス?」
「ペティナイフのようなものでやられたんだけど、今思えばあの刃になんかついてたんじゃないかって…」
「ああ…まあ、あのターゲットならあり得るな…」
雅紀は何かを考えて黙り込んだ。
恐らく、俺には伝えていないターゲットの情報を反芻してるんだ。
「悪かった。日頃からそういう物を持っててもおかしくはないって伝えなかった俺のミスだ」
「え…?」
「すまなかった」
じっと俺の顔を見ると、雅紀はそっと俺の頭に手を置いた。
「…動けるようになるまで、ここにいるんだな?」
「ああ…」
少し撫でると、雅紀はやっと微笑んだ。
「わかった」
ホントに…?
雅紀、本当に信じたんだろうか。
「しかし、智が恋人なんてね…そんなこと、一生ないと思ってたけど」