第5章 John 20:11
「…わかった」
逆光で表情が見えないけど、少しだけ雰囲気が和らいだのがわかった。
「和也、すごく心配して血眼で智のこと探してる。松岡のじいさんも珍しく智を探すのを手伝ってくれたよ?」
「え…?」
じいさん、もう引退するとかなんとごねてたのに。
仕事手伝ったっていうのか?
「おまえね…本当にどうかなったかと思って生きた心地しなかったんだからな」
「ごめん…」
エージェントと暗殺者は一蓮托生。
どちらかが倒れれば、その片方にも被害が出る。
だから、普通は切り捨てるんだ。
どちらかがコケたら、捨てる──
暗黙の掟みたいなもんだった。
それなのに……
雅紀はこうやって、必死で俺を探してくれる。
昔からこうやって俺を。
「ま、無事で良かったよ」
雅紀の腕が動いて、俺になにか差し出した。
俺のスマホだった。
「充電しておいた。これからはちゃんと仕事の前に充電しろよ?初歩の初歩だろうが……」
「え…?」
「充電が切れてたんだよ。新人がやるようなミスしやがって」
そういえば、あれからスマホには触れていなかった。
知らない間に、充電が切れていたんだろうか。
「ほんと時間掛かったんだからな」
もしかして…
俺がミスって充電が切れたから、こんなことになったのに連絡できなかったと解釈してくれたんだろうか。
「幸い、充電が切れる前に大体の居場所は特定できてたんだけど、お陰で部屋を特定するのに手間取ったんだからな?」
「あ、ああ…ごめん…」