第5章 John 20:11
雅紀は、そっと俺の額に手を置いた。
「どうしてこんなことになってる?説明しろ」
「…ターゲットに刺された…」
「ふうん…あれはアチラさんのじゃなくて、智のだったかぁ」
「ああ…」
もしかして、ボートの始末に行って何か痕跡を見つけたのか。
あの船には何か残してきているかもしれない。
雨も降ってたし、それどころじゃなかったから、確認もできなかった。
「安心しろ。まだアチラさん、見つかってない」
「そうか…なら、よかった」
「報酬はもうおまえの口座に振り込んであるから。後でスマホで確認しとけよ」
「あ、ああ……」
スマホの電源落としてたこと、言ってこない。
それが逆に怖い。
知らず知らずのうちに体に力が入る。
「で…?この家は?」
「……」
急に声が厳しくなった。
額に置いている手は、燃えるように熱い。
「誰の家なんだ?ここは」
「それは……」
体に余計な力が入って、腹の傷が引き攣れるように痛い。
心臓が爆ぜるように鼓動を早めてる。
翔は…
翔は、無事なのか
思考がまとまらない。
動悸が耳の中でうるさく反響している。
「智の…なんなの?この家の奴は……」
なんの感情も読み取れない硬い声に鳥肌が立つ。
「それは……」
ごくりと唾を飲み込む。
どうしてもその先の言葉が思いつかない。
「それは?」
あいつは、無事なのか。
そればかりが頭の中でぐるぐるしている。
「ま……いいよ」
意外な言葉に、雅紀の顔を見上げると逆光で表情がよく見えない。
ふーっと、少し長く息を吐き出す音がした。
「まだ動けないみたいだから、治ったら聞かせてもらうからな?」