第4章 Proverbs 28:13
危険を顧みず、命を助けてくれた恩人なのに。
そんな奴の気持ちを利用して立ち回ろうとするなんて…
いくら翔の命を守るためだとはいえ。
もう本当に俺という人間は、浅ましくて──
でも、ずっとそうやって生きてきた
家族を殺してしまった18歳の時から
ずっとそうやって浅ましく生きてきたんだ
「…今更…」
今更、変われるわけもない。
家族を殺して、逃げ回って。
新宿二丁目に紛れ込んで、その日出会ったやつの家にその好意を利用して上がり込み…そいつを抱くかわりに、しばらく養ってもらったりしたこともあった。
逃げ伸びるためなら、なんだってした。
そうやって、ずるずる過ごしてるうちに、暗殺なんて仕事するようになって…
もう二度と、翔がいるような陽のあたる世界には戻れなくなってしまった。
「…ああ…今更だよ…」
わかってる。
もう二度と、大野智って人間には戻れないこと。
父さんの息子に、母さんの息子に、姉ちゃんの弟に…
戻れないことは知ってる。
だってもういない
あの人達はもう、あの日……
この世からいなくなった
「…俺が殺した…」
…ねえ、智
ここは熱い
熱いよ
『自分のそむきの罪を隠す者は成功しない。それを告白して、それを捨てる者はあわれみを受ける』
「…なんで…?」
気がついたら、家のリビングに続く廊下で倒れてた。
周囲が焦げ臭い。
「なんで俺こんなとこにいるんだっけ…?」
あの後学校の近くまで送ってもらって、父さんたちとは別れた。
姉ちゃんはなんか忘れ物したとかで、もう一回車に乗って家に引き返すとか言ってた。
だっせぇって笑ったら、朝からモタモタしてる俺のせいだって逆ギレされた。