第4章 Proverbs 28:13
「…ああ、頼む…」
そう言うと、翔はまた目に涙を溜めながら頷いた。
…俺は、本当に酷い人間だ…
「じゃあ、智…俺、隣の部屋に居るから…なんかあったら呼んでね?」
翔は作業が終わると、枕元にボタンのおもちゃみたいなのを置いてくれた。
別の部屋に翔がいても、これを押せば呼べるようにしてくれている。
「ああ…ありがとう」
少し笑うと、翔は嬉しそうに笑い返した。
血の気のなかった頬は、薄赤色に染まった。
そのまま手を遠慮がちに振りながら、ドアから出ていった。
「ふう……」
眉間が重い。
体も、翔が言っていたようにだる重くて、手の先も動かしたくないほどだ。
熱の出た後の疲労感の中、吸い込まれるように目を閉じた。
…俺の勘が外れていなければ、翔はゲイだ…
あの翔の独特の雰囲気に、そっくりな奴の家に住んでいたことがある。
さっき何処かで見たことがあると思ったのは、そいつの仕草だったんだ。
それに時々言葉が女っぽくなるし、動きも妙な時がある。
それだけなら、そういう奴もいるから気にならなかったんだが…
いくら考えてもわからなかった。
なんで翔が俺を助けるって決めたか……
普通、こんな誰かもわからないやつを、犬を拾うみたいに家に連れて帰ってきて世話をするか?
理由がないとしないはずだ。
その理由が…翔の性癖じゃないかって、いま…気づいた。
瞬間、それを利用してやろうって思った俺は
「浅ましい…」