第20章 Romans5:3-4
ナビを頼りに、翔の家の近くまでワゴン車を走らせた。
助手席にはさっき雅紀から貰った調査報告書の紙袋がある。
いま俺は、あの家に向かっているんだ──
そう思うと、そくそくと足元からなにかが昇ってくる。
翔と離れてから、西島の家に行って。
行動認知療法なんかの治療をしてもらったけど…
あの日から、現実感がない日常を送ってる。
いや正確に言えば、あの日までの俺の日常が非現実みたいだったというか。
こんな世界のことなんか知らない高校生までの俺の世界が日常だったとしたら、殺しをやっている日常が今の俺のものなんだって理解はできた。
ただ、それがまだ自分的にしっくりきてない。
あれから5年以上経つのに…
どこか他人事だ。
和也にはよく「命を大事にしろ」って言われる。
どこか絵空事にしか感じられない日常だから、無謀に死地に突っ込んで行きそうなことがあって、ヒヤヒヤしてしまうそうだ。
…翔と過ごしたあの数ヶ月の時間だけが、死んだように生きてた俺の唯一”生きていた”時間だった気がする
あの時間を思うと、今日あの従業員たちの写真を見たときと同じような気持ちになる。
懐かしくて、
それからちょっと苦しい…
そんな、気持ち