第20章 Romans5:3-4
翔の家の近所のコインパーキングに車を停めて、少し歩いた。
乗ってきたワゴン車はよく考えたらオンボロで、翔のマンションの駐車場に停まってるのがそぐわない気がして。
幸い、今日は部屋に入ってみて様子を見るために来たから、大きな荷物もない。
ただ、雅紀に貰った資料は大きなナイロンのカバンに入れ直して持ってきた。
重くて、途中何度かカバンを持ち直した。
「ふ……」
これが俺達家族の今の重さなのかと思うと、ちょっと可笑しくなった。
「4人居たのにな…」
なんで今は俺ひとりになってしまったんだろう。
その答えが、この重さの中にあるのかな…
マンションに着いたら、無人のエントランスに入った。
夜だからか数台設置してある応接用のテーブルセットには誰も座っていない。
エントランスの自動ドアが閉まると、外の雑踏がほとんど聞こえなくなった。
無機質な静けさの中、歩を進めた。
高級マンションといったらコンシェルジュが居たりするようだが、このマンションには数台の監視カメラがあるだけで居ないようだった。
被ってきたキャップを目深にして、エントランス奥にある集合玄関の前に進む。
オートロック操作盤にカードキーを差し込むとドアが開いた。
そのまま中に進んで、エレベーターを待つ。
あの時、一度だけここを歩いたけど、案外なにも覚えていないものだ。
初めて来た場所のように感じる。
エレベーターが到着して、軽い合図の音がして扉が開いた。