第20章 Romans5:3-4
でも空港で見かけたときの沢村は、なんだか疲れた顔をして冴えない感じのおじさんになってた。
昔のような覇気がないというか。もう女のケツなんか追いかけていそうもない感じと言えばいいか。
「コイツ、日本に住んでないじゃん」
「え?」
「マニラに住んでる」
いつの間にか雅紀が隣の椅子に座っていて、滝藤の調べてくれた紙を覗き込んでいた。
「だから朝の空港ですれ違ったのか」
「向こうで仕事でもしてんのか?」
「多分、そうじゃないかな…次に就職したとこから、出張でもしてるんじゃね?」
でも滝藤の調べたなかには、仕事や勤務先のことはなにも書いてなかった。
「ふうん」
「もう一人…沢村といつも一緒に居た若いやつ…」
「え?」
「ホモなんじゃないかって思うくらい、一緒に居たんだよな…沢村とそいつ。そいつどうしてるんだろ…」
俺のこと、犯人だと決めつけた…アイツ。
「持って帰って探してみたら?」
「ああ…助かった」
「その資料の分は、データ化してまた送るから」
「ありがとう。そのほうが助かる」
「まあ、俺は指示出してるだけだから…データが揃い次第、いつものメアドに送っとく」
「頼んだ」
コーヒーを飲みきると、店を後にすることにした。
手に持っている資料はずっしりと重くて。
重くて、重くて