第20章 Romans5:3-4
コーヒーが入るまで、紙袋の中身を少し見た。
乱雑に写真なんかはビニールとかに入っている。
その中のひとつを開けて中を見てみた。
「わ…」
思わず声が出るほど、懐かしい顔がいっぱいいた。
「この写真の人たち、わかるのか?」
雅紀が聞いてくるのに、写真から目を離せなかった。
「ああ…わかる。名前、ちゃんと思い出せないけど。ちっちゃい頃から知ってる人たちだ…」
胸が締め付けられるほど、懐かしくて。
同時に忘れていた記憶が押し寄せるように蘇ってくる。
最近ちゃんと思い出せなくなってた、父さん母さんそれから姉ちゃんの顔も…
「っ……」
なぜだか、涙が出そうになった。
従業員だった人たちのただの写真なのに。
慌てて写真から目を逸らしたら、雅紀がおしぼりを俺の前に置いてくれた。
「まあ、ゆっくり確認しろよ」
「ああ…」
ちょっとだけ落ち着くのに時間が掛かった。
泣くなんて、もう何年もしてないから自分でも驚いてしまった。
その間に雅紀がコーヒーの入ったマグカップを置いてくれた。
湯気の立つそれを、ゆっくりと飲みながら写真を確認していった。
空港ですれちがった、アイツの顔を探した。
「あ、居た」
写真の裏をみたら、番号が振ってあった。
どうやらこれに対応する表が存在しているようだ。