第20章 Romans5:3-4
雅紀はコーヒーメーカーにペーパーフィルターをセットすると、こちらを向いた。
「おまえも飲むか?」
「ああ、貰う」
松岡の爺さんの影響でも受けたのか、雅紀の淹れるコーヒーは旨かった。
「なんだよ?真っ当なルートって…」
「大手のマスコミや雑誌社の連中だったり、な。多分、あの顔の濃い方の坊っちゃん、大学でマスコミ学かなんかやってたんだろ?その伝手で、堂々と大野製作所のこと調べてるんだよ」
カウンターに置いていたキャニスターを開けると、コーヒーの匂いが漂ってきた。
雅紀はそこから粉をコーヒーメーカーにセットすると、スイッチを入れた。
しばらくすると、お湯の沸く音が聞こえてきた。
「俺が調査を依頼してる奴らは、そういう伝手は使えねえからな…あくまで裏からしか手を出せないけど、あの坊っちゃんたちは親戚やら近所の奴らに話を正面から堂々と聞きに行くんだ。それに若くて折り目正しいイケメンと来てる。そりゃ早いわな。だから一人で調査をすることができてるんだと思う」
「…でも、俺達は俺達でしか得られない情報もあるだろ?」
雅紀はキャニスターの蓋を締めながら俺を見た。
ふふっと笑うと、それを冷蔵庫に仕舞った。
「まあな。後ろ暗いことだったら…俺達のほうが正確に調べられるだろうな」