第20章 Romans5:3-4
「和也に、発泡酒と生ビールの違いがわからないって言ったら、アルコールランプのアルコールでも飲んでおけばいいって吐き捨てるように言われたこともある」
「ぶひゃっ…」
笑いすぎて豚っ鼻になってる雅紀は、俺に背を向けた。
「……笑いたきゃ、存分に笑えば?」
「ぐっふぉぶぅぐぅっ…」
それでもなんとか背中を向けたまま復旧した雅紀は、涙目になって俺の方に向き直った。
「おまえ、まじで俺を殺しに来たの?」
「違う意味でね」
ニコリともせずそう言ってやると、雅紀の顔が一瞬で引き締まった。
「…場合によっちゃ、そうするつもりだったって言ったら…?」
「場合ってなんだよ」
「翔を殺そうとしてる場合ならってこと。俺は、最初からそれしか言ってない」
「……」
雅紀は暫く黙っていたが、ひとつコクリと頷いた。
「殺らねーよ」
「ホントだな?」
「ああ。殺んねー」
真面目な顔をして、右手の小指を出してきた。
「なんだよこれ」
「指切りげんまんでもしてやろうか?」
「……」
使えるものはなんでもしたほうがいい。
素早く雅紀の右手の手首を捉えると、強引に右手の小指を絡ませた。
「ちょっ…いてぇってっ…」
「ゆーびきーりげーんまーんうそついたらはりせんぼんのーますっ」
大慌てで指を切ったら、雅紀は手首をかばって悶絶してる。